なっちゃん

ムーチョ 

なっちゃんは小学生の女の子、関西の言葉と あの故郷の言葉を話します。
「なっちゃん いま 小学校で なに習ってんの?」
私がたずねると、
「赤い鳥だよ」
「赤い鳥って、赤い鳥 小鳥 なぜなぜ赤い 赤い実を食べたってやつけ?」
「ちがうよ」
「ちがうのけ?」
「うん、ちがうよ。あかいとり ことり なぜなぜあかい あかいみぃ〜をたべた」
なっちゃんの関西弁を初めて聞いた。
あかい も なぜなぜ も みぃ〜も 本当に違った。
私にはマネできない関西の言葉。
そうか、なっちゃんは 学校で関西の言葉を話しているのか。詩を暗記するだけでも 大変なのに、イントネーションまで覚えないといけないんだね。私に「ちがうよ」と 言ったのは きっと お友達に「ちがうよ」と何回も何回も言われたんだろうなぁ。
おんなじ 赤い鳥なのにね。
でもね、なっちゃんてば すごいんだ。
なんと「赤い鳥」の音読でクラス1番になったんだってさ。お友達が なっちゃんに「上手だね」って言ってくれたんだってさ。なっちゃん、よかったね!
「他にもパソコン習ったよ。住所をいれると地図がでてきて自分の家を見れるんだよ」
私はドキッとした。
「なっちゃん、お家って いま住んでるところけ?」
「ちがうよ、本当のお家だよ。庭のコスモスが咲いていて きれいだったよ」
本当のお家、なっちゃんは あの故郷のお家を本当のお家っていうんだね。
そうか、なっちゃん あの 故郷のお家を学校で見ちゃったんだね。原発が爆発してから1度も帰っていない本当のお家、いったい どんな気持ちで なっちゃんは本当のお家を見ていたのかな?
「本当のお家を見てたらね、なっちゃん家 大きいねぇ〜、すご〜いって お友達がいっぱい集まってきてビックリしたよ」
「自慢出来て よかったじゃん。コスモスも見れてよかったじゃん」
私は無理やり言葉をみつけた。
なっちゃん がんばってるねって言いたかったけど言わなかった。
がんばりたくて がんばってるんじゃないもんね。
がんばらないと どうしようもないから がんばってるんだもんね。
「あ、そろそろ電車の時間だ。なっちゃん またね」
「どこか行くのけ?」
「うん、新長田ってところに行ってくるよ」
「新長田ってどこにあるの?」
「神戸だよ。神戸も大きな地震があってね、とっても大変だったんだよ」
「危なくないの 神戸?」
「うん、もう危なくないよ。地震も もう 何年も前のことだからね」
「放射能は?放射能あるんでしょ?危なくないの 神戸?」
私は大きく息をはいた。
そうか、なっちゃんにとって 地震=放射能なんだ。
私は何から話していいのかわからず、
「なっちゃん、ありがとう。神戸は大丈夫なんだよ。地震がおきても原発がなかったから放射能汚染されなかったんだよ」
「えっ?放射能ないの!!いいなぁ〜神戸!!」
私は無理やり言葉をみつけようとした。
でも 言葉が みつからなかった。
「なっちゃん、途中まで いっしょに帰ろうか?」
「うん」
私は なっちゃんの小さな手を ぎゅっと握った。

 
(おしまい)と書きたかったけれど 書けませんでした。子供達が大人になるまでずっと見守っていかないといけないのではと思ったからです。
だから (おしまい)じゃなくて (つづく)
なっちゃん
はじめまして ムーチョです。原発事故の影響で関西に避難してきました。
「稲むらの火」100年後の未来のために堤防をのこしたという本です。原発事故は堤防で防げません。100年後の未来に残したのは放射能汚染、そして今、現在生きている子供達にも汚染といっしょに悲しみを残しました。なっちゃんは母子避難です。お父さんは地元で働いています。避難している子供達は みんな がんばっています。100年後の未来に私は堤防をのこせないけれど、原発事故後の子供達の生き方なら、100年後に伝える事が出来ると思ったのです。無力を思い知らされる日々ですが、今できることは、目の前の人に伝える事だと気づいたのです。私は なっちゃんが大好きです。

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