「教育機会確保法」と学校復帰

2019年8月15日

神戸フリースクール 田辺 克之 

 子どもの生活にとって、学校が占める比重は圧倒的な重さがある。母親も同じで、学校が生活の最優先となることが多い。学校を休むのは、病気のときだけで、不登校になるなんて予想もしていないから、すごく驚いて、パニックになる場合もある。
 (不登校はだれにでもおこることだとわかっていても、我が子に限ってと愕然とする場合もある。きのうまであんなに楽しく通っていたのに…と悲しくなる。しかし、つらいのは親よりも、子ども自身であることに気づいてほしい。)
 学校を休めば、友だちから「ズル休み」とはやし立てられ、子どもは罪悪感をもつ。学校に行くのは子どもの務めと言い聞かされ、心の芯まで学校信仰が焼き付いていて、寛大な親が、熱があれば休んでいいのよとすすめても、これくらいでは休めないと子どもは自分を鼓舞して登校する。それが高じて、いのちがけで登校する状況が起きている。不登校になれば人生の終わりだと思う小学生がいて、登校できないなら死ぬしかないと追いつめられる。子どもの自殺はこのありふれた日常で起こる。幼少より培われた学校信仰が根強く心を支配して、がんじがらめになっているのだ。学校だけじゃなく、多様な学びの場が存在し、民間のフリースクールへ通っても大丈夫だと知らせておけば、子どもは死ななくてよく、自分に合っている方を選ぶことができるのだ。2016年12月「教育機会確保法」が成立し、これまでほぼ50年間、不登校対策の目的が「学校復帰」であったのをくつがえし、学校だけじゃない、学校外の学びの場を選択する自由も保障されることになった。しかし、この法律はあくまでも努力目標であるために、学校や教育委員会はこの法律には消極的で、いまだに学校復帰を第一に掲げているところもある。

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 教育機会確保法という不登校生を応援する法律ができたのに、いまだに学校を休むことができず、子どもの自殺が止まらない。この異常事態にまだ大人たちは重い腰を上げたがらない。これまでの常識がくつがえることを恐れて、なんとかこれまで通りにやり過ごそうとしている。その結果、12万人前後で推移していた不登校生数が2年間で14万人を超える結果を招き、自殺も増えている。もはやためらっている時ではない。一刻も早く「学校復帰第一主義」を改め、学ぶ場の選択を自由にしてほしい。それは不登校生に限らない。このままだと数百万人の中学生が学校を捨てることになるかもしれない。
 学校を休むのは悪と決めつけ、まじめにそれを信じて疑わず、子どもを学校に送り出してきた保護者のみなさんに、お伝えしたい。学校はいのちがけで行く場所ではないです。子どもの心に学校信仰を根付かせるには、それなりの環境があったわけで、両親兄弟祖父母が小学校の入学式にむけて、ランドセルを用意したり、勉強机を備え付けたり・準備万端の体制をつくり、もうあなたが飛び立つだけだといわんばかりに整備され、子どもはなんの疑いもなく学校に登校していく。しかし、教師は待ってさえいれば子どもが通ってくるというこの常識をくつがえさないかぎり、イジメも体罰もそして自殺もなにも変わらない。
 つまり、この環境が問題で、ほとんどの市民がそう考え、社会もマスコミもコマーシャルなんかで入学式への準備ラッシュが起きる。子どもは疑うこともなく、小学校にまっしぐらとなる。
 この環境、この社会の空気が変わらないかぎり、不登校はおさまらないことを文科省も認めて、新しい法律をつくり、多様な学びと官民連携こそが喫緊の課題と学校及び教育委員会に通知を数回にわたって出している。

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 しかし、法律成立から2年たっているのに、兵庫県においては、各市の教育委員会が民間のフリースクールに呼びかけ1〜2回の顔合わせが行われただけで、新しいプロジェクトも取り組みも始まっていない。これからである。保護者とフリースクールが協力しながら教委や行政に提案していき、協議して、今よりも一歩前に進めていく努力が必要である。これまでの不登校対策が、教育委員会と学校内でなんとか処理しようとして、ついに行き詰ってしまったわけだから、いまこそ官民の知恵と力を結び付け、社会全体で受け止めていくべきだろう。とくに、教委および学校が第一目標と掲げてきた「学校復帰」というこれまでのやり方を改め、文科省17年3月の基本指針「学校復帰のみにこだわらない」という新しい不登校対策に全力で方向転換がなされるよう見守っていく必要がある。
 東京シューレを中心に8年がかりで、議連に働きかけて、ついに成立にこぎつけた教育機会確保法を何としても絵にかいた餅に終わらせないよう、各地のフリースクールなどとも課題を共有しつつ、一日も早く、不登校の子どもたち が笑顔で通えるような民間の学び場の確保と、多様さを認める柔らかい社会の訪れを期待しつつ、これからも教育機会確保法を足がかりに、教育改革の運動を積極的に続けていこうと思う。

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