相次ぐ児童虐待死事件を受けて

2019年8月15日

峯本 耕治 

 昨年の東京都目黒区で発生した5歳の女児の虐待死事件、本年1月の千葉県野田市の小4女児の虐待死事件、6月に発生した札幌市の2歳の衰弱死事件と、ショッキングな虐待死亡事件 が相次いで発生しています。
 いずれも児童相談所の危機意識やリスクアセスメント力の不足、児童相談所間及び関係機関間のリスクアセスメントの引継ぎや共有の不十分さ、安全確認とモニタリング(見守り)の不十分さ、保護者の拒否や攻撃性が認められるケースについての対応力の低さ等が問題となった事案で、児童相談所を含めた関係機関が適切に対応していたならば、防げたのではないかと本当に悔やまれる事案です。
 このような虐待死事件を受けて、国・政府も長期間安全確認ができていない子どもに対する緊急の安全点検の実施や48時間以内の安全確認ルールの徹底と立入調査の実施の強制、児童相談所の児童福祉司・児童心理司の増員など、児童相談所の安全確認機能や立入調査・一時保護等による介入機能・体制の強化を図ろうとしています。
 しかし、実際には、児童相談所の介入機能や体制を強化するだけでは、死亡事件は防げません。札幌市の事件では、近隣住民等からの通告を受けて児童相談所や警察が数回にわたって家庭訪問をしていますが、訪問しても留守だった場合にはそのままで終わってしまったり、また、仮に怪我が発見されても、怪我が小さいものであったり、親が怪我の理由についてそれなりの説明をした場合には、簡単な注意指導だけで対応を終了してしまうということが起こってしまいます。当然のことですが、通告に対して対処療法的(単発的、場当たり的)な対応・安全確認を行っているだけでは、重大ケースは防げません。

スポンサーリンク

 重大ケースを防止するためには、まず、最初の通告や受理時点でのしっかりとしたアセスメントが不可欠です。リスクの質(たとえば、暴力型、ネグレクト型、心理的虐待型)とリスクの程度(衝動性の有無等)、リスクの質が転換する可能性があるか(新しいパートナーが登場するなどの環境変化によりネグレクトに暴力リスクが加わるおそれ等)、悪条件が重なったときには具体的にどんな出来事が発生する恐れがあるか等の具体的リスクの見立てと予測が何よりも大切です。
 この最初のアセスメントの時点で非常にリスクが高いと判断された場合には、児童相談所による一時保護等の緊急介入が行われるわけですが、多くのケースでは、すぐに一時保護が行われるわけではありません。アセスメントに基づいて、①保護者に対して必要な注意や指導を行なった上で、②リスクの質と程度に応じたモニタリング(見守り)と支援サービスの提供が行われる必要があります。乳幼児の在宅ケースの場合にはリスクに応じた回数・頻度の家庭訪問等により、また、保育園や学校園等に所属している子どもについては、モニタリングのチェックポイント(外傷の有無や登園状況、その他の気になる子どもの症状等)と決めておいて、チェックポイントにひっかかる事象が認められた場合には、どのような対応をするかということを、あらかじめ決めておく必要があります。たとえば、「保育所に2日以上の欠席があった場合には、必ず家庭訪問して、子ども本人と会って安全確認を行い、理由を確認する」、「外傷が見つかった場合には、その説明いかんにかかわらず、市町村虐待対策課に連絡をして、家庭訪問を行い、再度の指導を入れる」とか、「重大ケースにつながるリスク要因が明らかに認められる場合には、次に頭部外傷が発見された場合には、その怪我の大きさや保護者の説明いかんにかかわらず、一時保護に踏み切る」「保護者の訪問拒否等の可能性が高いので、拒否されて会えなかった場合には、どのようなアプローチをするか」等の基本的な対応プランをアセスメントに基づいて、あらかじめ決めておく必要があるのです。

スポンサーリンク

 「虐待防止」というと、どうしても児童相談所に注目が集まりますが、実は、現在は各市町村の虐待対応課(「子育て支援室」等名称は色々です)と各市町村に設置されている要保護児童対策地域協議会が、虐待防止機関としてたいへん重要な役割を担っています。
 上記のような、しっかりとしたリスクアセスメント→アセスメントに基づく注意・指導→モニタリング(見守り)と支援サービスの提供→モニタリングのチェックポイントにかかる事態が発生した場合には、どのような対応をするかのプラン作り→リスクの高まった場合には一時保護等を行うという一連のプロセスによって重大事件を防止するためには、児童相談所だけでは不可能であり、児童相談所と市町村が「共同してアセスメントとプランニング」を行い、共同して虐待リスクを管理し、その高まりを防止していく必要があります。
 そして、この「共同アセスメント」と「共同プランニング」の役割を担っているのが、上記の市町村に設置されている要保護児童対策地域協議会です。この意味で、要対協は、日本の児童虐待防止システムにおいて、まさに要の役割を果たすことが期待された機関であり、重大ケースを防止するためには、児童相談所の機能強化と共に市町村及び要対協の強化が不可欠だと思います。

スポンサーリンク