環境

ホンの紹介『燕の歌』他

『燕の歌』

御庄 博実 (著) 和光出版 2014年刊 1,200円

以前この通信でお伝えしたことのある樺美智子さんの司法解剖に立ち会われ講演された御庄博実(本名・丸谷博)さんが去年、89歳で亡くなられました。その年12月に出版された『燕の歌』を公庄れいさんよりお借りして読みました。

燕の歌

はるかな
歳月を越え 波濤を越え
巣立ち また帰り来る
「いのち」たち・・・
あの鳥たちを僕はおぼえている

チチ チチと聞こえてくる
梅雨時の晴れの朝
僕の「がん」の手術はとっくにすんだが
術後 耳鳴り 一層激しく 妻の声も聞き取りにくい
空耳か幻聴か
視界を一文字に矢が飛び交う
聞こえるのは 若燕の旅立ちの準備であろう

チチ チチと呼んでいる
飛び交いながら 「いのち」の旅立ちを告げている
海を渡って南に去るという
また 海に潜って 貝になるともいう
季節になれば軒下に帰る
地上の戦火の 及ばない世界へ行け
アフガンで イラクで 硝煙が絶えない

昨日 沖縄では六十四年目の慰霊があった
集団自決で 生き残った人の涙
「生きて虜囚の辱めを受けず」八十二歳のあなたは
この手で二人の弟を殺した という
僕より二歳若いあなた
語ることの出来ないヒロシマの歳月を僕も持つ (後略)

(『燕の歌』より引用)

α線の行方

原爆爆裂の微塵が 広島・長崎を覆った
残留放射能はウラン粉塵を撒き散らし
「広島のガスを吸った人は助からん」と
半減期四十五億年というα線を放射し続ける
「内部被曝」という恐るべき被曝
幾年、幾十年にわたって焼かれ続けるDNA

空中で四センチ 体内では四十ミクロン
α線という陽子×中性子のエネルギー
わずか紙一重の距離に
重いエネルギーを放射して消える
漆黒の乾板に映し出された 白銀の一閃
六十年前の長崎の被爆者遺体から
今日 映し出されたというα線の軌跡
理論で判っていても
証明されたのははじめてである

広島・長崎で微塵となって拡がった
残留放射能の遺したもの
腰椎椎弓形成術で
脊椎管狭窄の治療を受けた
いま 僕の足の震える激痛は
うそのように消えたが・・・・・
「がん」が消えたわけではない

α線はどこにまぎれているか
今も イラクで アフガンで
「がん」の 白血病の
奇形の 足萎えの
DNAを焼き続けているであろうか

(「今日映し出されたというα線の軌跡」2009・長崎大学)


『原発と大津波 警告を葬った人々』

添田 孝史 (著) 岩波新書 2014年刊 740円

“けっして「想定外」などではなかった……。科学の粋を集めたはずの原子力産業で、地震学の最新の科学的知見は、なぜ活かされなかったのか。その後のプレートテクトニクス理論導入期において、どのような議論で「補強せず」の方針が採られたのか、綿密な調査によって詳細を明らかにする。” “あなたならどう行動したか”と帯にあります。
いずれも是非、手に取って読んでほしいと思います。

[蛙]

Last Updated on 2020年10月6日 by manager

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