勝手にシネマ

勝手にシネマ『0.5ミリ』

塩見 正道

『0.5ミリ』(2013年 / 日本 / 196分)

 原作・監督・脚本:安藤桃子
 出演:安藤サクラ、柄本明、坂田利夫、草笛光子、津川雅彦

この映画は、昨年話題になった日本映画のひとつですが、その話題性は監督と主演俳優が奥田瑛二の娘であるといったワイドショー的興味が大半で、内容については、介護問題を扱ったユニークな作品ということで済まされているようです。しかし、私が見た印象は違います。
主人公サワ(安藤サクラ好演)はヘルパーなので「介護問題を扱った作品」と言っても間違いではありませんが、5つの挿話からなるこの映画は、最後の挿話が最初の挿話に繋がるという円環をなしていて、ここが別のかおをもっているのです。
最初の挿話には寝たきりの父とシングルマザーの娘とその息子(小学高学年ぐらいか)の3人が登場します。サワは、娘から一晩父と寝てやってほしいと頼まれ、引き受けます。そして、夜はこれを着て寝てほしいと赤いネグリジェを渡されます。老人の「愛撫」に気持ち悪くなったサワと興奮した老人がもつれあい石油ストーブが倒れ火事騒ぎとなるわ、娘はその夜首吊り自殺するわで、第一挿話はサワの悲鳴で唐突に終ります。
その後3つの挿話が続き、最後の挿話。サワは最初に登場した少年が万引きするのを目撃し気になって声をかけます。彼は母を失って実父のもとで生活していました。父親は空き缶を拾って生活の糧を得ている男で、息子は俺には似てないだろうと語ります。自暴自棄になって逃げる少年を追いかけているとき、突然彼に初潮が起きます。
映画は何も説明しませんが、彼は母が父にレイプされた結果生まれたこどもで、母は子を父から守るために男の子として育てたと推測されます。自殺した母が白いネグリジェを赤く染めているシーンが突然出てきます。重く、昏いイメージで、「赤」「血」というモチーフに、私はつげ義春の世界を連想しました。
別のかおというのはDVです。このモチーフこそ安藤桃子という女性作家の心の深いところにあるものではないか、というのが私の直感です。ハズレかもしれませんが。
気になる監督です。今後の作品に注目していきたいと思います。

Last Updated on 2020年10月5日 by manager

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