保育・教育

イギリスの子ども達は自信満々

弁護士 峯本 耕治

 何はさて置き、森池さん、西宮市議への当選、本当におめでとうございます。私のイギリスからの帰国歓迎会を3月にやっていただいた時に、奥さんからのお電話がきっかけとなって、出席者全員で、森池さんに立候補を勧めることになりました。その時に、事実上の立候補宣言があったと記憶しています。遅かれ早かれ、森池市議は誕生していたのでしょうが、今回の地方選での森池市議誕生の出発点になったのが、私の帰国歓迎会であったというのは、格別の喜びです。

 さて、話はコロっと変わりますが、イギリスの学校教育に関して、面白い調査結果があります。
 1992年に行なわれた調査で、11才(小学校の最終学年)と13歳(中学2年)の子どもを対象に、「自分自身の能力に対する評価」を尋ねたものですが、何と、11才の子どもの96%が「自分の能力が平均以上(大変優れている12%、平均より上43%、平均40%)であると答え、平均以下だと答えたのはわずか4%でした。この数字は、13歳の子どもについても、ほとんど変わらず、93%の子どもが平均以上と答えています。
 これをどう評価するかは別にしても、とにかく、イギリスの子ども達の自尊心の高さは相当なものです。日本で同じような調査をやった場合、どんな結果になるのでしょうか。
 では、どうして、イギリスの子どもたちは、これほど高い自尊心を持つ事ができるのでしょうか。イギリスの小学校を訪問すると、比較的簡単に、その理由がわかります。
 イギリスの小学校に一歩足を踏み入れると、日本の小学校との雰囲気の違いに驚かされます。
 建物も小さな物が多く、教室もこじんまりとしていて、普通は、大きな黒板もありません。後に紹介しますように、グループ授業が中心となっているため、それに合わせて、机と椅子が雑然と置かれています。教室の多くには、読書等のための小さなスペースが設けられていて、壁には、子どもたちの絵や作品、研究成果などが所狭しと貼ってあります。
 その様子を想像していただければ分かるように、全体的に非常に明るい、柔らかい雰囲気に作られています。簡単に言えば、日本の幼稚園や保育園に近い雰囲気です。
 クラスの生徒数は、全国平均で27名程度ですが、私が見学したクラスの多くは、20名〜25名でした。ちなみに中学校は約21人が平均です。
 見学したほとんど全ての授業に、教師以外に、1〜3人のボランティアの親が教師のアシスタントとして参加していました。イギリスの小学校では、親の学校参加の一つとして、親のボランティアの活用が奨励されているのです。
 親のボランティア以外にも、クラスの中に、何らかの学習困難(「Special Educational Needs」、以下SENと言います)を抱えている子どもがいる場合には、その程度に応じて、特別教師やアシスタントが配置されていることが、珍しくありません。現在、イギリスの小中学校の全子どもの約20%が、このSENの教育システムの対象となっています。学習困難な程度に応じて1〜5レベルに分けられ、個々の子どものニーズに応じて、個別の教育的配慮が行なわれるのです。このSENには、障害の有無や学力の問題だけでなく、行動上の問題を抱えた子どもなども含まれます。とにかく、理由を問わず、学習の困難さを抱えた子どもは全て対象となるわけです。
 授業も、日本のような一斉授業中心ではなく、5〜6人ずつのグループに分けて行われるグループ授業が中心となっています。
 グループ授業といっても、教師やボランティアの親が、各グループを回りながら、子どもたち一人ずつ指導していくことが多いため、必然的に、教師・親と子どもが一対一で会話する場面が多くなります。
 子どもによって、また、グループによって、課題が異なることも少なくありませんので、授業の終りに、全員で答えあわせをすることも、余りありません。
 欧米の教育に関して、しばしば聞く話ですが、教師は、子どもたちを本当によく誉めます。時には、大袈裟なくらい誉めています。一対一で相手をしていることが多いため、その子どもに何か良い点があれば、他の子どもとの比較をしないでも、簡単に誉めることができるわけです。ある小学校では、全ての子どもが、少なくとも年に一回、何らかの理由で、先生から賞状をもらっているとのことでした。
 もうひとつ、大きな特徴として、イギリスの小中学校では、自分の意見や思いを表現するということが、非常に重視され、色々な場面で奨励されています。言葉での表現はもちろん、音楽や芸術を手段とする表現活動も同様に大切なものと考えられています。
 ですから、授業の中で、子どもたちが意見を発表する機会が多く、また、日常的に、子どもたちは、教師や友達と、本当によく喋っています。それも、教師と子どもが一対一で話をする場面が多いから可能になるものです。
 このようにイギリスの学校教育では、日本と比較すると、はるかに個々の子どもに着目した教育、個々の子どもとのつながりを重視する教育が行なわれています。
 もちろん、その反面として、イギリスの授業は、決して効率的なものとは言えません。現実には、子どもたちの間にはかなりの学力差があると思われます。しかし、少なくとも言えることは、子どもたちが、いわゆる「落ちこぼれ感」「取り残され感」を持たずに済みやすい教育になっているという点です。
 このことが、最初の調査結果に現れている、子どもたちの自尊心の高さを生んでいる大きな要因になっていると思われます。

 本来、学校教育には、「集団教育」の側面と、「個々の子どもに着目した教育」の両面があり、どの国の学校教育制度も、両者のバランスの中で形づくられています。「集団教育」がもたらす弊害を、「個々の子どもに着目した教育」をうまく取り入れることによって是正しているという意味で、後者は前者を補うものと言ってよいかも知れません。
 日本の学校教育は、「集団教育」の方向に、大きく偏ったものとなっています。そして、多数の子どもたちを集団として扱うことを重視した場合には、必然的に管理的要素が強くなります。
 この集団・管理的側面を重視した教育の結果として、日本の学校のクラスの中には、「授業が面白くない」「授業がわからない」「自分が評価されていない」と感じている子どもや、先生との関係が悪い子どもなど、クラスの中に自分の「居場所」を見つけることが困難な子どもの割合が、非常に高くなっています。
 教師の一般的権威・抽象的権威が失われ、子どもたちの気質が変化してきた中で、「居場所」のない子どもたちが、自分の「居場所」を求めて勝手に動き始めたというのが、今の「学級崩壊」現象ではないかと、私は感じています(もちろん、それ以外にも、様々な要因が複合的に重なって生まれてきているのでしょうが)。
 その意味で、「集団教育」と「個々の子どもに着目した教育」の適正なバランスを、どのように実現していくかが、これから日本の学校教育の大きな課題ではないかと考えています。
 「そのために、弁護士として、何か、やれることはないか」と考えている、今日この頃です。

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