教育

ドラマ「やけ弁」とスクールロイヤー

弁護士 峯本 耕治

事前にお伝えできれば良かったのですが、4月21日から5月26日まで、NHKの土曜夜のドラマで「やけに弁がたつ弁護士が学校でほえる」(通称「やけ弁」)という題名で、「スクールロイヤー」を主人公とする連続ドラマ(6話)が放映されました。大阪のスクールロイヤー制度についての情報提供がきっかけとなって制作されたドラマで、私自身も「法律考証」という立場で、このドラマ制作に関与することができて、たいへん貴重な経験をすることができました。
困難な保護者対応、部活動と教師の労働環境問題、学校事故、不登校、いじめ問題など、学校が直面する様々な問題について、神木隆之介君が演じる新人の弁護士が、学校配置(週2回)の「スクールロイヤー」として、法律を武器に立ち向かっていくというドラマです。
学校に週2回配置されている形の「スクールロイヤー」は現在の日本には存在しませんので、このドラマに本当のモデルはありません。しかも、多数の利害関係者が存在し、複雑に入りくんだ学校問題を、弁護士が法律を武器に単純に解決できないことは明らかですので、各回約30分のドラマで、一体どれだけのことを描くことができるのか、リアリティのある面白いドラマになるのかなど、たいへん不安でしたが、社会性もあって、エンターテイメント性も高いドラマになったのではないかと思います。あらためて、ドラマ作りを担っておられる脚本家やプロデューサー、監督等の能力・専門性の高さに驚かされました。撮影現場も見学させていただいたのですが、神木隆之介さん、南果歩さん、田辺誠一さん、小堺一機さん、濱田マリさん等の一流の俳優陣のスキルの高さに感激しました。

 「スクールロイヤー」という言葉を、このドラマで初めて聞かれた方がほとんどだと思います。それもそのはずで、昨年8月に文部科学省が2018年度より全国10カ所で、いじめや保護者とのトラブルへの対応について、学校の求めに応じて相談に応じる「スクールロイヤー」を派遣する取組を開始するという方針を発表したのですが、「スクールロイヤー」という言葉がメディアで使われたのは、これが初めてではないかと思います。
ただ、以前にもご紹介したことがあるかも知れませんが、大阪(大阪府教育庁)では既に2013年からスクールロイヤー制度が始まっています。9名の弁護士が、スクールロイヤーとして府内の小中学校や教育委員会の相談を受けていて、年間100件以上の相談を聞いているのではないかと思います。
スクールロイヤーの制度化も、スクールカウンセラー (SC) やスクールソーシャルワーカー (SSW) 等の専門家活用の流れの中で実現してきたものですが、最近になってスクールロイヤーが注目されるようになってきた最大の理由は、「保護者対応の困難化」と「いじめ防止対策推進法及びいじめ防止基本方針等の制定」です。
ドラマ「やけ弁」でも描かれていましたが、保護者対応の困難化は、現在の学校教育が抱える最大の問題の一つとなっていて、困難化の防止や学校と保護者との適切な関係調整の視点から、紛争解決の専門家である弁護士へのニーズが高まってきたのです。また、いじめ防止対策推進法等により、これまで学校長の合理的裁量に委ねられてきた、いじめ対応という生徒指導分野に初めて、法律によって具体的なルールが定められたわけです。学校に求められるいじめ対応・手続が具体的に定められた結果、いじめ事案についての事実調査と認定方法、被害生徒への支援方法、加害生徒等への指導・支援方法、保護者への説明・対応方法、重大事案への対応方法などを巡って、弁護士のサポートを必要とする事案が多数発生するようになっています。

Last Updated on 2020年8月28日 by manager

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