少年犯罪

川崎市の中1生の事件から感じること

弁護士 峯本 耕治

川崎市の中1生徒殺人事件を受けて、文部科学省が実施した緊急調査で、連絡がとれなかったり、学校外の集団と関わったりして、「生命身体に被害が生じるおそれがある」児童・生徒が全国で400人、そのうち7日間以上連絡して連絡が取れない児童生徒が32都道府県で232人確認された、との報道がありました。更に、「その後の追跡調査により、大部分の子どもの安全が確認されたが、安全確認ができない子どもが依然として83名いる」旨の調査結果が報告されていました。学校現場に関わっていると、中学生以上で不登校となり、非行傾向を抱えて家を出てしまい、今どこにいるか判らないというケースに出会うことは珍しくありませんので、私自身の実感としては、この最初の調査結果の7日以上所在不明であった児童生徒数が全国で232人というのは少し少なすぎるように感じますが、いずれにしても、単純な言い方をすれば、その経緯・原因は様々でも、学校にも家庭にも居場所を見いだせない子どもが相当の数に上っています。有名なハインリッヒの法則によると、その予備軍は、数倍、数十倍、数百倍に上ることになります。
前回のニュースで紹介しました佐世保の高校生殺人事件は不登校から加害者になったケースで、川崎市の事件は不登校から被害者になったケースですが、加害・被害を含め、このような重大ケースの多くが不登校の状態の中で発生しています。たとえば、小学生以上の児童虐待による死亡事件、いじめによる自死事件、深刻なうつ症状からの自死事件、家庭内暴力による殺人事件、重大な少年事件等の多くは不登校の状態の中で発生しているのです。
そのため、このような重大ケースを防止するという危機管理の視点からは、子どもの学校での居場所(愛情・安心・安全環境と自尊感情が満たされる場所)を確保し、不登校を防止すると共に、不登校が始まったときには、その原因や背景について、しっかりとした見立て(アセスメント)を行い、プランニングに基づいて早期に支援をしていくこと、特に前述したような重大ケースにつながるリスク要因を抱えた不登校を絶対に見逃さないこと、いくら対応が難しくとも、そのまま放置することにならないようにすることが本当に大切です。
川崎市の事件でも、被害生徒が島根県から転居してきたばかりの転入生であることからすると、やはり学校生活が本当に安定するまでは少し意識して見守りをしてあげる視点が重要であったと思われますし、その上で、4月の入学後きちんと登校し、部活にも積極的に参加していたにもかかわらず、①夏頃に部活に参加しなくなった時点、②11月頃に年上のグループとの関係が始まったとの情報が入った時点、③3学期から全く登校しなくなった時点等において、子ども自身から、その変化の理由や原因(変化には必ず何らかの環境的原因、環境的変化があります)、しんどさを、しっかりと聴き取ってあげることが必要だったと思います。そして、そのような状況の変化の中で、④顔面に大きな怪我が発見された時点等においては、明らかに重大ケースのリスク要因を含んだケースに発展しているので、子どもの即時の安全確認と聞き取り、関係機関との連携等の危機管理的な対応が必要であったと思います。
様々な課題を抱えた多数の子どもへの対応が求められる学校現場にとっては簡単なことではないように思われますが、「不登校・問題行動や非行、いじめ等が全て、環境的な原因(家庭環境・学校環境・友人関係環境等)から生じた子どものしんどさ(愛情面の課題や発達面の課題)のシグナル・症状として捉える視点」が当然のことになれば、それほど難しいことではありませんし、実際にこのような視点をもって、自然に子どもにつながりながら対応している先生も多数おられます。

Last Updated on 2020年10月5日 by manager

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