石田僚子さん追悼20周年記念文集

アンネのバラ

山田 康子

 5月の陽光と満開報道に誘われて、甲陽園山麓にあるその名もアンネのバラの教会へアンネのバラを観に行きました。
心地よい日差しを浴びて黄金オレンジ色の沢山のバラが、教会前庭斜面にたたずむアンネ像を護って覆い隠さんばかりに咲いていました。
 アンネのバラはアンネの日記に感動したベルギーの園芸家が作出し、強制収容所から生還したアンネの父オットー氏に献じたものです。
 このバラがオットー氏から贈られて初めて日本にやってきたのは1972年、そのときは10本中1本しか根付かず、1976年10本が再送されました。
 そして1本を託された京都綾部市の園芸家が接木で増やした苗木をアンネと平和を愛する希望者に送りはじめたのです。そのころ私もこのバラのことを知り、以来いつかどこかで観たいと思ってきました。そして30年を経てこの日アンネについての特別展示見学とともに実現したのです。今では日本でも1万本以上が育てられているとのこと。アンネを慰霊して30年前に建てられたこの白い小さな教会の礼拝堂は、隠れ家のアンネを偲び採光はダビデの星のステンドグラス1つのみで窓のない構造になっています。
 可憐なアンネ像の足元にはその言葉を記したプレートがありました。

 I shall work in the world and for mankind.(私は世界と人類のために働きます)

 1929年6月12日のアンネ生誕から今年で81年、没後65年。生きていたならどんな活躍をしていたのでしょう。
 美しいバラを鑑賞しながら、人種・宗派を超えて平和を共に希求する色々な方法があることを改めて認識しました。そしてまた多くの可能性を秘めた若い未来も閉ざしてしまう戦争の残酷さをかみしめました。
 帰路の坂道を下っていると、アンネと同じような年齢で20年前に人生を突然断ち切られた僚子さんにもこのバラを供えたくなって、青い空を見上げました。
 すると数日前に所さんから打診があった原稿を供花に代えたくなり、実物でないのは残念ですが最終締切日に拙稿「アンネのバラ」を携えて急ぎここに参加することができました。いつか本物のアンネのバラをと願いながら。

(やまだ・やすこ 弁護士)

Last Updated on 2020年8月21日 by manager

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