社会

子どもの貧困について

元高塚高校教員 高橋 智子

2015年9月22日の朝日新聞に子どもの貧困について考える記事が載っていて、私も一緒に考えてしまった。

  1. 文部科学省などによると、昨年度の大学進学率(短大などを含む)は73.0%だが、生活保護世帯に限ると31.7%に落ち込む。
    (注)生活保護世帯は日本では該当者の2割。仏国では7割。
  2. 生活保護を受けている家庭の高校生がアルバイト代や奨学金を塾代に使うと保護費を減らされるルールが、10月から見直される。塾代に充てる場合は生活保護費の減額対象外とするよう、厚生労働省が運用を変える。大学受験料や入学料は減額の対象となる。
  3. シングルマザーの就労率は80.6%(2011年度全国母子世帯等調査)で、30年近く80%台が続く。
  4. ひとり親家庭の相対的貧困率は12年時点で54.6%(13年国民生活基礎調査)OECDでトップ。
  5. シングルマザーの約6割は年収200万円以下。給与所得者の22.9%(2010年)。現在3組に1組が離婚。
  6. 6人に1人の子どもが貧困で、その多くはひとり親家庭。
  7. ひとり親の世帯を対象とした児童扶養手当(月額9,910円〜42,000円を年収365万円以下の世帯に支給)はシングルマザーの約7割、シングルファーザーの約5割が受給している。

この記事の結論としては、今ある貧困の連鎖を断ち切り、貧困を拡大させないため、児童扶養手当を始めとした現金給付の拡充が早急に必要とのこと。貯蓄ゼロ世帯が22.3%(2010年)、貧困率16.1%(2012年)の日本は今のところ何の対策もしていないとのことだ。他の国では10%以下に抑える対策をとっているとのことであった。
これらのデータを見て私が思いついたことは

  1. 返さなくてもよい奨学金を貧困家庭の高校生、大学生に給付する。
  2. 貧困家庭の高校生、大学生は学校食堂を無料にする。(朝食と昼食をとれるようにする。)立命館大学の食堂では、学生の親たちで朝食(8時〜8時30分)を100円で食べられるようにしていると聞いた。イギリスの大学の食堂は昼食が無料で食べられるときいた。
  3. 県営住宅、市営住宅に必要な枠を作り、貧困家庭を無料にする。枠がとれない場合は住宅助成金を出す。現在ある制度を使いたいと調べに行った人の話では、一生に一回だけで、それも三か月だけと言われたそうだ。これでは住宅助成金制度とは言えない。

(1) を思いついたのは担任したN君やK君のことを思い出したから。
N君の母親と進路の話をしたとき私は奨学金をとって大学にいかす気はないかと聞いた。母親は生活保護と開業医で雑用した賃金で生活していた。「大学へはやりません。子どもに借金を負わせるのはかわいそうだから。」と言った。40年以上経っても耳にこびりついているN君の母親の返事です。K君は在日朝鮮人で両親は懸命に働いていましたが収入は安定せず、二人の兄たちの一人は高卒で働いており、もう一人も卒業したら働くことになっていました。K君は長田に住んでいたのですが近くの塾の先生が無料で勉強を教えてくれたそうで英語の先生にお聞きすると、英語の基礎はできているとのことでした。K君は動物がとても好きで動物の勉強ならしたいというので朝鮮奨学金は返さなくてもいいので申請したらどうかといいました。本人は面接に行きとれることになりました。足りない分はアルバイトで補っていました。四年生になって動物を飼う実習が始まるとアルバイトができなくなり、私にお金を貸してといってきたので無利子で貸しました。働くようになってすぐ返してくれました。
返さないでいい奨学金や、無利子で貸してくれる公的基金があれば貧困家庭(親は懸命に働いている)の生徒が自分の生きたい生き方を選ぶことができると思う。
(2) についてはI君を思い出す。私は朝忙しくて朝食がとれないことがよくあった。そんなとき、学校のすぐ側にあったパン屋さんでパンを買った。昨日の売れ残りで安くなっていたので3個買っていたら門の前でI君に出会った。「朝ごはん食べてきた?」と聞くと「食べてない。」と言うのでパンを分けてあげた。「ありがとう。」と言ってとてもうれしそうな顔をした。母は辛抱できずに家を出て行き、父は酒を飲んでパチンコで稼いでいた。家庭訪問したとき、肝臓を悪くしたので週に一日だけ酒を飲まない日をつくっていること、小指と引換えに足を洗ったことなどを話して手を見せてくれた。I君は昼食の時間、クラスメートから少しずつもらって食べていたのではないか。お金を持っているときは食堂で食べていた。食堂のおばちゃんがごはんを大盛についでくれたとうれしそうに話していたことがある。I君の父親は生活保護はとっていなかった。授業料免除の手続もいやがった。これ以上滞納すると退学になると事務からいわれ家庭訪問して印をもらった。奨学金は私が保証人になっていたので彼の卒業後返還の督促がきたが、阪神大震災の後は何も言って来なくなった。
(3) については最近知りあったシングルマザーのKさんから聞いたことから思いついた。離婚(原因は不安定な収入と暴力)して小学生と中学生の二人の娘と住む所をさがしていたとき、県営住宅に母子家庭枠はないかと聞いたら「無い。」と言われたそうだ。失業したり、離婚したりしたとき、男女を問わずまず住む場所が必要な人がいるだろう。日本は外国に較べ公営住宅が少いらしいが、貧困家庭で入居を希望する人は全員入居できるだけ増やすべきだ。入居できなかった人には住宅助成金の制度をつくり助成すべきである。
この三つが実行できれば中学生の暴力も無くなるだろうし、教員はもっと勉強を教える時間が増えるだろう。日本の国の経済力はこれ位できないはずはない。同じ位の他の国は貧困対策に税金をもっと使っている。日本は今以上に減らそうとしているのではないか。このままいくと学校も社会も荒れていくだろう。
〈参考1〉木下武男著「若者の逆襲」を読んでいたら参考になることがあった。
日本は勤労者の生活基盤にかかわる分野の財政支出が極めて貧弱である。①家族政策 ②積極的労働市場政策 ③住宅政策 ④生活保護 社会保障・社会政策の費用を、公的社会的支出の対GDP比(OECD調査、2005年、社会保障・人口問題研究所データ)で見てみると日本は対GDP比1.7%であり、スウェーデンとフランスは両国とも6.8%であった。日本のGDPは479兆円(2010年)で、スウェーデンやフランス並にするには24兆円必要である。財源はある。事業主負担額の対GDP比はEU15ヵ国の平均が11%前後。日本は5%であり、ヨーロッパ並にすれば社会保険料は26兆円の増収になる。内部留保は1999年に157兆円だったのが2010年には294兆円になっている。株主配当はいくらもらっていても税金の上限は10%である。
〈参考2〉神戸市の中学校で昨年から学校給食が始まったが、生徒が食べていたら髪の毛や木屑や虫の死骸などが出てきたそうだ。私はテレビのニュースで知った。給食を始めるとき、学校毎に調理するよう要望する声が多かったが、神戸市はデリバリー方式にした。経費をかけたくなかったのだろう。業者は安くしようとして人件費を削るだろう。材料も安いのをさがすだろう。(食材費は値上がりしている)非正規で働く高齢者や若者はしんどくなったら辞めていくだろう。何十校もの弁当を昼食に間に合うように配達するのは大変だ。やはり各校で調理し、食堂もつくるべきである。生徒がしっかり食事をとれば暴力も減り、学習意欲も高まるだろう。教師も楽になるだろう。コンビニ弁当には飽きている生徒もいると思う。人間の心が伝わるような昼食(朝食食べてない子には朝食も)を子ども達に食べさせたい。

Last Updated on 2020年9月26日 by manager

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