「灯」を掲げ受け継ぐ

島田 誠

 気がつけば無音の世界に横たわっていた。器械の点滅する微光の中を深海魚のように動く人影。集中治療室では、痛みのために体を動かすことはできなかった。脳脊髄鞘腫という難しい手術から生還した。確率としては死あるいは重い障害が残ることもありえた。石田僚子さんが亡くなったちょうど一年前の七月だった。腫瘍だけではなく、抱えこんだ雑多な欲望や野心も切除され、再びの生を大切なことのみに使うことを誓った。一九九二年、二◯◯九年に亡くなられた二人の女性にちなむ文化支援基金を作り、一九九五年の震災時のアート・エイド神戸の運動の取り組みは、あの体験に発するが、さらに源流を遡れば、七五年前の東北大飢饉の「農村セツルメント」に一八歳で参加した母のDNAにたどり着く。私の画廊の仕事も、これらと違う二つのことではない。なすべきことに身を捧げるという喜びは、なにものにも変えがたい。
 みなさんが掲げる「灯」、母から受け継ぎ、私に点った「灯」。闇の中で命を支えるために点滅する微光を見つめて、新しい一歩を始めたように、それらの灯が、また多くの方の新しい一歩を踏み出す力であることを願いたい。

(しまだ・まこと ギャラリー島田)

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